IoT事業投資 vol.1
初心者のためのIoT
IoTと聞いて何を思い浮かべるだろうか?スマートホン?Apple Watch?
IoTはそのまま「モノのインターネット」と訳される場合が多いが、あまりに漠然とした用語であるために、何を思い浮かべたらいいかわからない、というのが本音であろう。
もっとも、あたりを見回してみると、自宅のなかにも、街中にも、あるいは皆さんが関係するビジネスにおいても、いろいろな「モノ」がインターネットにつながっていることに気が付くだろう。
パソコンやスマートホン、タブレット以外の「モノ」がインターネットを介してデータを交換している、ということは珍しいものではなくなっている。
それもそのはず、IHS Technology の調べによると、2017年時点において、IoTデバイス(インターネットに接続可能な機器)の数は全世界で274.9億個、2020年予測では400億個にのぼると考えられている。全世界の人口の4倍以上の機器がインターネットにつながっているのである。
今後の産業においては、インターネットを介してデータをやり取りする機能を新規製品に組み込んで何ができるか、という発想を避けて通ることはできない。
連載第1回目は、「初心者のためのIoT」と題して、IoTビジネスの全体像を整理してみよう。
INDEX
IoTシステムの全体像
IoTの概念は、当初は多数の「モノ」にチップ(いわゆるICタグ)を埋め込み、モノの個数や、そのモノがどこにあるかということを管理しようとしたことから発展した構想である。
ここから様々な周辺技術が発展し以下のような一連のシステムが出来上がった。この一連のシステムを「IoT」と総称しているようである。
(IoTを構成する要素)
1、 音声や周りの環境(画像、動き、温度、湿度、風、エネルギーなど)を認知するセンサー
2、 センサーで得たデータを送信・集積するためのネットワーク(通信技術)
3、 データを分析するためのコンピューター
4、 分析結果をもとに最適な状態を実現するための指令を送信する装置
IoTシステムの実用化
IoTシステムでメディアを賑わせているのは、「コネクテッド・カー」と呼ばれる自動車のIoT化である。自動運転化を目指した研究が世界中で実施されていることから、この分野での発展は目覚ましいが、実用化に向けては法制度も含めての議論も必要となるために本格的に普及するのはもう少し先となるであろう。
今回は実用化が目前に迫っており、大きな市場開拓が見込める「スマートホーム市場」と「ドローン市場」を取り上げる。
スマートホーム市場
皆さんの家には家電のリモコンは何個あるだろうか?あるいは、何個の時計に囲まれて生活しているだろうか?
「スマートホーム」が実現された家庭では、すべての家電がインターネットに接続され、その操作はすべてスマートホンやタブレットで行うことが可能だ。将来的にはAIスピーカー(Amazon echoやGoogle Home)に話しかけるだけで夕飯の支度も掃除も終わる、ということもそう遠くないだろう。
CNETによれば、2018年第1四半期のAmazon echoの出荷台数は250万台、Google Homeはそれを上回る320万台に上っており、今後関連商品がヒット商品番付を賑わすことは間違いない。
インターネットにつながった家電の機能を一括して操作できるようなデバイスは「IoTプラットホーム」と呼ばれている。スマートホン、タブレット、AIスピーカーがその代表的な製品だ。
これらの「IoTプラットホーム」は数々のアプリ(AIスピーカーでは「スキル」という)をダウンロードすることで、周辺機器との連携が可能なる。
AIスピーカーの開発で一歩先を行くAmazonでは、Amazonプライムとの連携により、音楽の再生や本の読み上げ、ショッピングなどの機能を充実させることにより、IoTがもたらす体験に重点を置いて他社のAIスピーカーに差をつけようとしている。
今後としては、いかにリコメンド機能を充実するか、やAIの活用による最適化をどのように制御するか、さらにいかに多くの家電や他の住宅機器と連携を図れるか、に焦点が移っていくだろう。
ドローン市場
ドローン市場についても以前より注目される市場ではあった。しかし、ドローンを単なる撮影機器であったり、エンターテインメント機器である、というとらえ方ではその真価をみ誤っている。
ドローンもインターネットとつながれば、優れたIoT機器になりうる。
例えば、「大きな倉庫や農場などで不審な侵入者を感知すると、ドローンはGPSを巧みに駆使して侵入者のいる場所まで自動で駆け付け、不審者をカメラ撮影、リアルタイムで監視データセンターに撮影データは送信され、犯罪捜査、また今後の防止対策につなげる・・・」というシステムは、すでに大手警備会社によって実現されている。
ドローンは情報収集機器として優れており、今後はインフラの点検やビルの外壁点検などに大きな影響を与えるといわれている。IoTを活用することでリアルタイムなデータのやり取りが可能となり、データ検証技術が高まれば、人間の手の及ばないところまで調査、研究が可能となるだろう。
インプレス総合研究所の調査によると2017年の国内ドローンビジネス市場は503億円(推測)、24年にはこの7倍になると推測している。
IoTビジネスの今後
IoTデバイス、といっても既存の「モノ」がインターネットにつながっただけであるので、製品自体についての差別化は難しい。Google Home もAmazon Echoもそれ単体ではさして真新しい機能を持つものではなく、他のデバイスとの協業によって新たな世界をつくっていくものである。
その意味では、今後のIoTビジネスは、一つ一つのハードウエア(モノ)はどんどんシンプルになっていき、プラットホームと背景にあるインフラとを全体としてみて、どのような体験を提供できるか、という点がフォーカスされてくると考えられる。
IoTによる自動化と事業投資
これまで見てきた通り、IoTシステムは何らかのオペレーションを自動化することを目的としていることが多い。これにより、ユーザーの利便性を向上させるとともに、ビジネス自体を自動化する方向に向かっているといえる。
次回では、自動化したビジネスへの事業投資は今までとどのように違ってくるのか、について考えてみよう。
(本件に関するお問い合わせ)
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