JOL最前線(後編)
Nov 29 2018
JOL最新動向
JOLのスキームといえば、合同会社をSPC(特別目的会社)にして、投資家に匿名組合出資の形式で出資の募集をするケースがほとんどです。これは、法的にも税務的にも事例が多数あり、安定性があるということが一番の理由となっています。
しかし、SPCのマネジメント費用や決算費用、また会計上・税務上の損益の分配処理、現金の配当処理などの費用がかさむため、小規模のファンドには向かず、少なくとも10億円以上のファンドに用いられることが多いようです。
もっとも、設備投資資金のために資金調達を行う業種はなにも航空機・船舶などの大型のものに限らず、比較的少額の資金調達もあります。
今回はオペレーティング・リースを活用した様々な投資商品についてご紹介します。
INDEX
ファンドを使わなくてもいい?
匿名組合ファンドの仕組み
匿名組合出資を行うことで税制上メリットが得られる理由は、出資先のSPCの損失を、出資割合によって按分された額について税務上損金計上できるからです(投資金額を上限とする)。
航空機リースや船舶リースの場合、法定耐用年数が8~12年だとしても、事業資金の60%~80%ほどがデット(借入)によるものであることから匿名組合出資額の2.5~3倍のアセット(航空機本体、船舶本体)を購入することになり、多額の減価償却費が計上されます。
これにプラスして、イニシャル費用が初年度で損失計上されますので、初年度の会計上・税務上の損失は匿名組合出資額の70%~80%に上ります。
しかし、近年では、損金を計上できる金額が投資額の40%~50%にとどまる商品が多いようです。
アセットを所有したら?
ファンドを組成するのは、小口の投資を呼び込みやすいからです。そもそも投資家1名が投資する場合にはSPCを設立する必要はなく、アセットをそのまま保有しても同じ効果が得られます。多額の自己資金があり、多くの利益が計上される会社では、航空機や船舶を自社で丸ごと保有する場合もあります。
この発想から、現在ではいくつかの小口のオペレーティング・リース商品が誕生しているようです。
様々なオペレーティング・リース
建材(仮設足場)リース
「足場」とは、建設工事現場などで使われる建物の周りに組み立てられた、鉄・アルミ製のパイプと網状の金属板からなる仮設資材で、皆さんも見たことがあるでしょう。
投資家はこちらの足場自体の所有者となり、足場リース会社にリースします。10年程度のリース期間が設定され、リース期間終了後は、足場リース会社が購入選択権を行使して足場を買い取るか、市場に売却することで初期投資を回収します。
投資回収率は120%程度、年平均利回りでは2%程度と収益はあまり期待できませんが、投資した初年度に投資額の全額を減価償却できるということで、すぐに完売となってしまいました。
即時償却の理由は、少額資産の一括償却です。建設用足場は建設現場ごとに組み立てて使うため。1ユニットが何本のセットなのか、という概念がありません。そのために、1本ごとに資産を判定し、10万円以下であるので、少額資産の一括償却を適用する、という理屈のようです。
もっとも、建設用足場は、リース対象物件となっている足場の特定が困難であるために、その管理方法について、リース先に確認しておく必要があるでしょう。
ヘリコプター・リース
航空機リースと同じ理由で、ヘリコプターを対象としたオペレーティング・リースも紹介されています。金額はというと、小さいものならば5000万円ぐらいからありますが、7~8人乗りだと1億円~2億円することから、共同名義で購入し税効果を得る、という手法もとられているようです。
ヘリコプターの法定耐用年数は5年。中古だと2年ぐらいで減価償却が終了するものもありますので、税効果は非常に高いといえます。
一方で、市場に提供される機体数が限られていること、またヘリコプターという特性上、山岳地帯や軍用基地など必ずしも安全が保障されていないところでも使われることが難点といえるでしょう。
高級車リース
節税のために中古のベンツを購入する、という手法はおなじみの節税対策といえます。これを一歩進めて、車両をオペレーティング・リースの方式でリースすれば、航空機・船舶に引けを取らない強力な投資商品となります。
レンタカー営業用の車両の法定耐用年数は4年、中古車だと短期の減価償却が可能です。中古市場も成熟しているために、税務的にも安定しているといえます。また、車はなじみのある商品ですので、リスクが理解しやすい、また損害保険も定型的なものが存在することも大きな強みです。
オペレーティング・リース投資商品の今後
航空機・船舶に限らず、いろいろなものがオペレーティング・リース商品として活用されています。リース税制をクリアにする必要があるために、何にでも応用できるわけではありませんが、資金調達をするうえで大きな可能性を秘めています。
今後はシェアリングエコノミーの発展で、モノの貸し借り、レンタル、サブスクリプション消費という分野がどんどん進んでいるために、それらの新産業を支えるうえでも、投資家の資金の流れを生み出す一つの画期的な方法であることには疑いありません。
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