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相続税対策商品大解剖 vol.0

予告編

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 3月19日、国土交通省は2019年1月1日時点での公示地価を発表した。

 昨年度は、「かぼちゃの馬車」事件や融資資料改ざん事件から波及した不動産融資の冷え込みがあり、少なからず不動産市況に影響を及ぼしたはずである。しかし、蓋を開けてみれば、東京圏の公示地価は商業地で4.7%の上昇であった。注目すべきは地方圏の住宅地が27年ぶりにプラス(0.2%の上昇)に転じたことだ。

 

 毎年公表される公示地価であるが、地価の上昇のニュースを見るたびに、「自分の土地は大丈夫か?」と思ってしまう方も多いことだろう。平成27年度の相続税増税の時には雑誌・新聞・メディア、こぞって相続税対策について取り上げた。あれから3年たった今でも、相続対策商品の売れ行きは好調のようだ。

 

※土地の相続税評価は「公示地価」ではなく「路線価」が関わってくる。

 

 今回の「Lenovi Premium特集」では、相続対策の中でも「相続税を下げる」ことにスポットを当てて、その全体像から商品設計の細かいところに至るまで、余すところなく紹介していこう。

 

 

相続対策の新法続々

 

 専門家の間では昨年の終わりごろから、1980年以来、約40年ぶりの大改正となった民法・相続編の改正が話題になっている。2019年初頭から随時施行されているが、相続が実際に起こった時の実務上の難点を克服したものが多い。主要なものは以下の通りだ。

 

配偶者居住権の創設(2020年4月1日施行)

 

 今までは、居住している土地建物は基本的には配偶者が相続するために、居住土地建物の相続税評価額が高額である場合などは、配偶者控除を超えてしまう場合があった。このとき、他の財産を配偶者が受け取ると、多額の相続税がかかってしまい、配偶者のその後の生活に支障をきたしてしまう。また、自宅以外に資産が少ない場合には、住み慣れた資産を売却して遺産分割に応じるケースもあった。

 

 今回、配偶者居住権を認めることで、配偶者は評価の軽減された居住権のみを相続、子は居住権の負担付所有権を相続することにより、配偶者は自宅に住み続けることができ、さらには結果的に、配偶者の相続税評価額を減らすことができるようになる。
 具体的な評価方法については、次回以降の本編でも触れていこう。

 

※自宅の評価が高いと配偶者控除では控除しきれない相続財産が発生する。

 

自筆証書遺言がパソコンで作成可能(2019年1月13日施行)


 これまでの法律では、自筆証書遺言は、本文、目録含めすべて被相続人が自筆で書く必要があり、大変な負担となっていた。今回では、財産目録のみではあるが、パソコンで作成可能、また不動産謄本や銀行口座のコピーも添付が認められることとなった。

 

自筆証書遺言の法務局保管制度(2020年7月10日施行予定)


 上記の自筆証書遺言を法務局に保管できる、という制度も少し遅れるが導入される予定だ。これにより、家庭裁判所の検認手続きが不要となるなど、手続きが利用しやすくなる。

 

相続財産の仮払い制度(2019年7月1日施行)


 相続における生命保険の大きなメリットの一つとして、遺産分割協議を待たずに生命保険金が短期間で振り込まれるために、葬儀費用その他の準備に使える、というものがあった。今回の改正で、遺産分割協議前でも、相続財産を仮払いしてもらえる制度が創設されたため、この点での急な出費の心配はなくなったといえるだろう。

 

 この通り、相続における実務上の難点は少しずつ解消されつつある。相続サービス関連事業者は、このような相続関連の話題を出して、相続対策がやりやすくなったことを紹介し、自社のサービスにつなげる絶好の機会ととらえていることだろう。

 

(予告編)本連載の内容

 

 相続に関する話題には事欠かない。紹介したような民法の改正のほかにも、事業承継税制の改正で、遺留分の主張により家業の資産が分散することを防ぐ方策も盛り込まれた。この事業承継のテーマでも本が何冊も出版できるボリュームはあるが、本連載では、あくまで相続「税対策」の「商品」に的を絞って展開してみよう。

 

相続税の計算方法とそれぞれの相続対策

 

 まず、第1回では複雑な相続税の計算方法と相続税対策を俯瞰してみよう。単に相続税対策、といっても、なぜ相続税が安くなるのかについて、理解しているのといないのとでは相続税対策の商品の見方が変わってくる。


 最後には、相続税の計算方法と相続税対策の一覧をまとめたダウンロードツールを用意したので、ぜひ参考にしていただきたい。

 

第2回~第5回 相続税対策商品そろい踏み


 第2回からは、相続税対策商品の中味に迫っていこう。表向きは「相続対策」の商品、とは言いづらいため今まで特集されることはなかったが、相続のために活用される商品は現に存在する。

 

 まずは生命保険として、特に海外生命保険にスポットを当てる。相続税法の改正で税金対策のメリットは薄くなったものの、ベールに包まれた海外生命保険について触れたい。

 

 

 また、第3、4、5回は特に不動産を使った相続税対策商品について検討したい。ファンド化された不動産小口化商品、あるいは区分所有のままで売られたオフィスビル、今の市況に乗ろうとしているホテル・旅館投資など、商品の中味を深くえぐってそのメリットとデメリットを検討したい。

 

第6回 相続対策商品の見極め方と本当に必要な相続対策

 

 第6回はまとめとして、相続対策商品のまとめと、二次相続をにらんだ相続対策、そして相続税以外の様々な問題の回避方法について紹介する。
 
 これから相続対策をしたいと思っている富裕層の方々のほか、相続税に関わる全ての方に役立つ内容になっているだろう。