5分で読める!不動産投資(前編)
May 15 2020
事業計画書のチェックポイント
不動産業界に激震が走ったスルガ銀行のシェアハウス不正融資問題。
その余波は他行の不動産融資にもおよび、不動産投資に対する新規融資は細り始めているようです。業界では東京オリンピック前まで高止まりが続くのではないかとみられていた不動産市場も、今年に入っては東日本大震災以来、初めて下落傾向に転じました。
今回のスルガ銀行の融資資料改ざん等の行為は断じて許されたものではありませんが、投資家側も銀行や不動産業者の資料を鵜呑みにするのは危険だということが改めて認識されたのではないでしょうか?
今回は、主に個人向けに作成されたワンルームマンション投資にありがちな罠を挙げて、不動産投資のシミュレーション(事業計画書)のチェックポイントを3回にわたって連載します。今後の投資の参考にしてみてはいかがでしょうか?
まずは現地を見てみましょう
ワンルーム、アパート、一棟マンション、不動産投資にもいろいろありますが、資料をもらったら、必ず現地を視察してみましょう。
不動産投資初心者の投資家は「見てもわからん!」というかもしれませんが、現地に行くと、街の雰囲気、日当たり、建物の新しさ、管理状態、駅からの経路、など様々なことが分かってくるはずです。
不動産のプロならば、見ただけで大体の査定は可能ですが、まずは、実際の建物をみて、一般感覚で住む人がいそうかそうでないかを判断してみましょう。
事業計画書の基本チェックポイント
現地をみて、「悪くなさそうだ」という感覚を得たら次はいくつかの表面的なポイントを検証します。
物件価格
まずは価格ですが、投資用不動産の価格は思った以上に上下します。
東日本大震災のあった2012年には、豊洲のタワーマンションは30%ほどの下落を見せましたが、現在は回復しています。また、投資用1棟アパートの相場も2012年に比べて2018年では1.5倍程度になっています。
そういった資料は、投資用不動産サイトや日経新聞等を検索するとすぐに出てくるので、まずは現在の不動産市況がどのような状況なのかを把握することが重要です。
不動産投資のリスクはいろいろありますが、その一つに「流動性リスク」というものがあげられます。株式と比べて売りたいときにすぐに売ることができないというリスクです。相対的に価格が安い市況の時に物件を購入するということで、売却時の価格に柔軟性が生まれ、流動性リスクを抑えることが可能です。
しかし不動産相場が下落しているときには、不況である場合が多く、銀行融資が細りますので、多めの自己資金が求められます。絶好の投資タイミングの時には金融機関は融資せず、買ってはいけないときに融資量が増える、というのは「いつか来た道」です。
※不動産市況は思った以上に上下する
賃料設定
賃料の設定については、投資利回りに直結するために慎重に検討しましょう。新築の場合にはある程度相場より高めに設定されていますが、それでも入居者が付くことが多いでしょう。しかし、その賃料は100%といっていいほど下落します。1回目に入居者が変わる2年~4年の間で、数%の下落を見込んでおいた方がよいでしょう。
事業シミュレーションで最も疑わしいポイントはここで、中には10年、20年賃料が変わらない設定をしているものも見受けられます。その場合には、賃料の下落を見込んだシミュレーションに引き直す必要があります。
さらに、賃料相場が周辺の相場とあっているか、ということを検証します。以前はデータを入手するのが容易ではなかったために、プロに賃料査定をお願いすることもありましたが、現在ではデータ化が進み、だれでも賃料相場が把握できます。
2-3千円のずれはあまり気にせずに、大まかな賃料相場をインターネットで調べてみましょう。駅からの近さ、アパートかマンションか、1階か2階以上か、でおおよそのことは把握できます。
利回り
不動産投資初心者の方が始めに混乱するのは「利回り」でしょう。定期預金や債券と違い、不動産投資にはいくつかの利回りの表示がありますので、異なる物件を比較するときには、同じ指標の利回りを比べなければいけません。
表面利回り
まず、最も一般的な指標は「表面利回り」です。これは、1年間ずっと満室であったことを想定して、年間賃料÷物件価格、を計算した最もシンプルな指標です。2018年現在では不動産市況は高いところにありますので、東京の物件の表面利回りは3.5%~4.5%ぐらいでしょう。これが、リーマンショックの直後だと7.5%~9%ぐらいでしたので驚きです。
現況表面利回り
1棟アパートや1棟マンションの購入を考えるときには、満室想定の表面利回りよりも、現況を重視します。
さて、一般の投資家はどのぐらいの入居率が通常か判断がつきにくいと思いますが、都内のアパート・マンションで入居率が80%を下回るような案件は、即問題ありと思ったほうがいいでしょう。街にはよく空室のあるアパートやマンションを見かけますが、優良物件は常に90%以上の入居率を保っているものです。
地方の案件では常に90%以上という入居率は難しい物件もあります。入居率が慢性的に80%以下であるような地域では、現況の賃料収入で計算しても利回りがある程度見込めるだけの物件価格に設定されているか、という視点から検討する必要があります。
NOI
「Net Operating Income」の略で賃料収入から管理費、修繕費、固定資産税などを差し引いたものを物件価格で割ったものです。一般的には表面利回りに比べ、1%~1.5%程度低くなります。
これも複数の物件を比べるときには、どのような経費を差し引いているのかを合わせる必要があります。例えば、ローン金利や火災保険料、修繕積立金などは含まれていたりそうでなかったりしますので、統一する必要があるでしょう。
その他の利回り
その他の利回りについては、IRR(%)、レバレッジ後利回り、などやや専門的な表記があるものもありますが、まずは上記の3点から比較検討することで十分です。
次回は「サブリース」と種々のコスト
さて、今回は前編として、不動産投資を始めたい人向けに基本事項をまとめました。とはいってもプロの感覚をいくつか織り交ぜましたので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
次回は、よく不動産投資攻略本で紹介されている「サブリース」についての落とし穴、また、修繕費やその他コストについて知っておかなければならないことをまとめます。
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