「知らなかった」では済まされない!正しく学ぶ相場操縦
2018年6月末、日本の証券取引等監視委員会と中国証券監督管理委員会(CSRC)が連携し、中国人の投資家を相場操縦の疑いで摘発しました。
クロスボーダーでの証券不正取引の摘発は各国の当局が連携をとる必要があるために、今までは摘発が難しい面もありましたが、今回の摘発で、双方の当局はこれからの国際的な証券犯罪の防止に意欲を見せております。
今回は、知らなかったでは済まされない「相場操縦」について詳しく解説します。
私たちを守る金融商品取引法
株式投資は、証券会社に口座を開設するだけで簡単に始められることや、少額からでも投資ができることなどから、初心者の目にも魅力的に映ることでしょう。しかし、守らなければならないルールがあります。
日本では、不公正取引行為を規制する「金融商品取引法」が制定されています。この法律により、有価証券の発行・売買などの金融取引を公正に行うことができ、投資家の保護や経済の円滑化を図ることにつながっているのです。
不公正取引行為の一つである相場操縦
「相場操縦」は、公正な価格形成をするべき相場を意識的・人為的に変動させ、あたかも自然に成立しているかのように他の投資家に誤認させることで、自己の利益を図ろうとする行為です。なお、このような行為を行った者は金融商品取引法により、刑罰や課徴金などの罰則が科せられます。
相場操縦の摘発例
2017年の東証マザーズ上場のインターネット通信販売会社の株価操縦事件が記憶に新しいのではないでしょうか。
「買い上がり」と呼ばれる手口でインターネット通信販売会社の株価を不正に吊り上げたのち、高値で売り抜き利益を得ていたというものです。
2011年には、東証2部上場の不動産会社の株価が「買い上がり」や「仮装売買」の手口で不正に吊り上げられた事件もありました。
ほかにも、事実関係の確認されていない情報を流す「風説の流布」の手口で相場の変動を図ったとされる「ライブドア事件」も印象に残っている事件の一つでしょう。
禁止されている相場操縦行為
以下の行為は相場操縦とみなされ、刑罰や課徴金などの罰則が科せられますので十分に注意してください。
見せ玉
売買を成立させる意図がないにも関わらず、特定の株式の売買が活発であるかのように見せかけ、他の投資家に取引を促すような行為をいいます。
仮装売買
同一人物が同じ時期に同じ価格で売買の注文を行うといった権利の移転や金銭のやりとりを目的としない取引を指します。
馴合売買
ある特定の株式の売買状況に関して他の投資家を誤解させ取引を誘引することを目的とし、知り合い(親族を含む)同士の売主と買主が示し合わせて、同じ時期に同じ価格で売買注文を行う取引です。
終値関与
ある特定の株式の終値を高く、または安くする目的をもって、立会終了近くに終値を操作する行為です。
このほか、買い上がり(売り崩し)、作為的相場形成、風説の流布、株価固定(安定操作取引)、高値安値形成など禁止されている行為は多数あります。
相場操縦行為は禁止!公正な取引を行いましょう
出来高の少ない株式などは、売買を繰り返しているだけで適正な価格の形成に影響を与える場合があります。知らず知らずのうちに相場操縦と認定されることのないよう、同一銘柄について多額の取引を連続して行うなどの紛らわしい行為は避けて、健全な投資を心がけましょう。