ブロックチェーン・インパクト vol.1

Jul 06 2018

もう逃げられない!ブロックチェーン技術とは?

 

 「ブロックチェーン技術」は近頃になってますます大きくメディアに取り上げられ、様々な分野への応用が期待されている。
連載第1回はベースとなる基本的な情報として、「ブロックチェーン技術」の概要を簡単におさらいしてみよう。

 

 

「ブロックチェーン技術」って何?

 

サトシ・ナカモトの論文

 

 2008年11月、オンラインコミュニティ「metzdowd.com」に「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:ピア・ツー・ピア電子キャッシュシステム)」という、たった9ページの論文が掲載された。

 

 著者は「サトシ・ナカモト」という人物。その正体は(名前から日本人ではないか、という憶測を呼ぶが)いまだに謎に包まれている。

 

 その後コミュニティのなかで少しの議論を経て2009年1月、サトシ・ナカモトの論文に興味を持った仲間内でコードが書かれ、最初の取引ブロックが形成された。

 

 これが、その後仮想通貨の世界を席巻するビットコイン誕生の瞬間である。

 

 サトシ・ナカモトは、中央管理者がいない、つまり発行主体が存在しない通貨システムを実現しようとし、「ブロックチェーン技術」を応用した仮想通貨「ビットコイン」を開発した。

 

 ビットコインに関する詳細な説明は次回以降に譲るとして、ここではビットコインのベースとなっている「ブロックチェーン技術」の特徴についてみていく。少し抽象的だが、次回以降の特集も併せて読んでいただきたい。

 

ブロックチェーン=帳簿


 
 ブロックチェーンとは、日銀のレポート(2016.1.19 中央銀行発行デジタル通貨について)によると

 

 「中央に特定の帳簿管理主体を置くかわりに、複数の参加者による『分散型』での帳簿管理を可能とする技術」

 

 とされている。

 

 その実態は、「暗号化された取引データの塊(ブロック)が、鎖(チェーン)のようにつながっている帳簿」である。

 

 これだけ見ると単なるデータの蓄積で、今までの技術でも、「データの塊がフォルダごとにサーバーに存在」していた。しかし、そのデータの蓄積の方法について、ブロックチェーンは以下のような特徴を備えている画期的な技術である。

 

ブロックチェーンの特徴

 

改ざんが極めて困難

 

 取引データ(AさんがBさんに1通貨を送る、など)はある一定のルールによって暗号化されるが、この暗号化の仕組みは、元のデータが1文字でも違うと全く異なった数列となるように設計されている。したがって、データが記録された後に改ざんがあれば、明らかにわかる仕組みになっている。

 

 また、一つの取引データの塊(ブロック)は一つ前のブロックと新しい取引データの両方をもとにして暗号化し作成されるため、ある一部分のブロックに改ざんをして、それ以降のブロックを正しくつなげるためには、以降のブロックについて多大な労力と時間・お金をかけて暗号化をし直さなければならない。

 

 このような暗号化の仕組みによって、データが極めて改ざんされにくい仕組みを実現した。

 

分散化

 

 暗号化された取引データは、ネットワークに参加するコンピュータ(「ノード」、「ピア」などと呼ばれる)それぞれが、すべての取引データを保持し、各コンピュータがネットワークの中で情報の伝達、検証などの役割を担っている。

 

 したがって、一つのコンピュータについて外部から攻撃を受けたとしても、ほかのコンピュータにて取引データは保持され、自律的なネットワークは維持される。

 

 ここでいう「ノード」は一般的なパソコンの場合もあれば、大規模なコンピュータである場合もある。またIoTが進むとネットワークに接続された小型のデバイス、という場合もありえる。

 

 つまり、インターネットに接続された数々のコンピュータがそれぞれデータの保持・伝達・検証を行う役割を果たしていることになる。

 

 「二重払いの検証」、「ブロックチェーンへの記録の検証」などの重要な役割を担うノードには、その固有の仮想通貨で報酬が自動的に支払われることによりシステムが運営されている仮想通貨ネットワークもある。

 


(世界中に散らばったノードはネットワークによってつながっている)

 

トークン化


 トークン(Token)とは「しるし」という意味で、英語では「感謝のしるしとして」などの文脈で使われる単語である。しかしブロックチェーンにおいては、「トークン」とは価値をあらわすもので、1BTC(ビー・ティー・シー・ビットコインの単位)が60万円の価値を表しているとき、この1BTCが1トークンである。

 

 ブロックチェーン上のデータが現実社会の価値と結びつくことによって、価値の保持、移転が、ドル円のような通貨を介さずに、トークンを移転するという行為によって可能になった。いまの経済社会でトークンに一番近いものは、会員ポイント、あるいは、ゴルフ会員権などの利用権、のようなものだろうか。

 

 これらは基本的に譲渡が禁止されているか譲渡契約を締結するかでしか移転できないが、ブロックチェーン上ではこれらの権利や価値は自動化された契約と記録によって譲渡可能となる。

 

(トークンといってもコインのようなものがあるわけではなく、暗号化されたデータである)

 

キーワードは「分散化」「トークン化」

 

 ブロックチェーンがいろいろな現実社会のサービスに結びついていくためのキーワードは「分散化」と「トークン化」だ。

 次回は今までの技術と比べて、ブロックチェーン技術は何が「スゴイのか」について考えてみよう。

 

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