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エンジェル税制完全マニュアル vol.0

予告編

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エンジェル税制とは

 

 「エンジェル税制」とは、起業間もないベンチャー企業が資金調達を行いやすくするとともに、エンジェル投資家のベンチャー企業投資を促進するために創設された、税制上の優遇措置である。もともとは平成9年に創設、平成20年に改定されてほぼ現在の制度となった。

 

 すでに創設から20年以上経過している税制であるが、平成27年度の1年間でエンジェル税制を利用したベンチャー企業数は88件しかない。

 

 それでも近年では多いほうで、平成20年改正以降では、年間40件~80件といったところだ。同じように税制優遇措置のある「中小企業等経営強化法に基づく優遇税制」を受けるための「経営力向上計画」の認定件数が平成30年7月31日現在65,966件に上っていることと比べると、その差は歴然である。

 

なぜエンジェル税制は利用されないのか?

 

 政府が用意した制度が利用されない場合には、政府の啓蒙活動が不十分であるためにそもそも誰も知らない制度だった、ということが大半であるが、エンジェル税制は、ベンチャー投資家や起業家であれば、一度は耳にしたことがある税制だ。

 

 また、インターネットで検索すれば、中小企業庁、経済産業局、また各自治体のホームページからエンジェル税制に関するあらゆる情報を入手することができる状況にある。

 

 それでも利用されないのはなぜか?それは、エンジェル税制の要件が複雑であること、そして、そもそも要件を満たす企業とエンジェル投資家の組み合わせが少ないためであると考えられる。

 

 適用しようとするベンチャー企業の要件だけを見てみても、設立からの年数によって従業員や研究開発費の支出状況などの要件が異なる、資本要件が複雑、また、各要件を判断する際にも株式数なのか、議決権数なのか、種類株の場合はどうなのか、など実在のベンチャー企業に実際に当てはめてみると多くのハードルが発生し、結局どうしたらいいのかわからない、というのが関の山だ。

 

※複雑な要件が並ぶエンジェル税制

 

個人投資家が優遇税制を受けられる数少ない手段

 

 しかし、要件が複雑だから利用しない、というのではもったいない。なにせ、エンジェル税制は個人投資家が税制のメリットを享受できる数少ない税制の一つだからだ。

 

 法人の場合には、法人税制を利用したり、生命保険やオペレーティングリース投資商品を購入することで利益を繰り延べたり、税額控除を利用したりして税効果を享受する手法がある。

 

 しかし、個人所得を少なくする方策は、いつもコンサルタントを悩ませるものだ。結局、築古のアパートや小ぶりの海外不動産を購入して、減価償却費と相殺する方法をとるぐらいしか方法がないことが多い。

 

※築古のアパートやアメリカの郊外不動産などがある。

 

 エンジェル税制の優遇措置の中でも際立っているのは、「対象企業への投資額-2000円」をその年の総所得金額から控除する、というものだ。仮に500万円の投資であれば、499万8000円が総所得から控除される。

 

 所得税の累進課税が最高税率の投資家であれば、確定申告により約225万円の還付金が受けられる。このような制度は、めったにあるものではない。

 

(予告編)エンジェル税制完全マニュアル

 

 一般の投資家が、エンジェル税制を適用できるベンチャー企業に、投資することができる機会はほとんどない。それは、全国でも年間100件以下しか利用事例がないからだ。しかし、この記事を読めば「私もエンジェル税制を利用しよう」というベンチャー企業が増えるかもしれない。

 

 数多くのエンジェル投資家がベンチャー企業を支えることで、新しいベンチャー投資エコシステムが創出されれば、世界に後れを取る日本のベンチャー企業の環境がもっとイノベイティブなものになるだろう。

 

 LENOVI Premium 第三弾では、エンジェル税制のすべてについて4回にわたってお送りする。

 

 

(第1回)エンジェル税制の大きなメリットと適用要件

 

 先ほども述べたとおり、エンジェル税制には大きなメリットがある。個人投資家にとっては、最大の税制メリットといっても過言ではない。しかし、その要件はベンチャー企業側の要件、および投資する個人側の要件とさまざまである。

 

 第1回では、この要件について、書籍や他のメディアでは全く紹介されていないポイントも含めて詳細にまとめてみよう。

 

(第2回)エンジェル税制の要件詳細

 

 企業にはいろいろな形態があり、成長段階によって株主構成、売上に対するキャッシュフロー比率、従業員の形態などさまざまである。第2回では、要件の詳細について、表面的なものだけではなく、実務上問題となる点まで掘り下げて説明する。

 

(第3回)エンジェル税制完全マニュアル(前編)

 

 第1、2回でエンジェル税制適用の要件を見てみると、いかに既存のベンチャー企業が使いにくい制度であるかがわかると思う。しかし、注意すべきポイントが見えてくるはずだ。第3回では実際に新規に設立する会社を例にとって、エンジェル税制の要件を満たす企業として確認書を受けるにはどのようにしたらよいかについて解説しよう。

 

(第4回)エンジェル税制完全マニュアル(後編)

 

 第4回では主に手続き関係に焦点を当てる。事前準備に必要な書類、実際に都道府県の担当職員に提出する書類、さらに確認書取得後の投資家へのケアについてまとめてみたい。

 

 さらに会員特典として、エンジェル税制申請フォーマット記載例をダウンロードできるツールを用意するのでぜひ期待してほしい。

 

※2018/9/25 予告編第2回 エンジェル税制の要件の詳細を追加しました。

 

(本件に関するお問い合わせ)
株式会社イーアライアンス
MAIL:info@e-alliance.co.jp
TEL:03-6256-8477