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エンジェル税制完全マニュアル Vol.1

エンジェル税制の大きなメリットと適用要件

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 新しいコトを始めたいエグゼクティブのためのプラットホーム「LENOVI」で、最も検索されているワードは何か?

 

 それは「シードマネー」である。現在ではVC(ベンチャーキャピタル)や大企業がベンチャーに投資するCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)が盛んで、毎日のように大型の資金調達がメディアを賑わせている。

 

 しかし、起業時点では、なかなかVCと接点を持つことは難しく、シード段階での投資を検討してくれるベンチャーキャピタルは限られている。


 今回は、少しでもシードマネー獲得のハードルを下げるべく、エンジェル税制のメリットと要件の詳細についてご紹介したい。

 

 

特に投資家にメリット大・エンジェル税制

 

 エンジェル税制は特に個人投資家のメリットが大きい税制である。そのメリットは①投資した年に受けられるもの、および②投資後、株式を売却し損失が発生した場合に受けられるものの2種類がある。

 

投資した年に受けられる優遇税制

  

 投資した年に受けられる優遇税制は以下の2つがある。企業の要件を満たしていれば、いずれかを選択して適用可能であり、両方を併用することはできない。さらに、2つの優遇税制は所得税のみに認められており、住民税には認められていない。

 

 優遇税制A

  

(対象企業への投資額-2000円)をその年の総所得金額から控除する。
 ※控除対象となる投資額の上限は、総所得金額×40%と1000万円のいずれか低い方
 ※設立3年未満の企業への投資が対象

 

 「-2000円」「総所得金額×40%」というところにピンときただろうか?そう、ふるさと納税の際の寄付金控除と同じである。それもそのはず、エンジェル税制を適用した投資金額は寄付金控除の対象となる「特定寄付金」に含まれる、という形で税制が定められている。

 

 ほとんどのエンジェル投資家は優遇税制Aを選択するだろう。
 

 課税所得が「4000万円+投資金額」以上の投資家は、「投資金額で控除される課税所得」に対する所得税率は45%であることから、仮に1000万円投資した場合は、確定申告で約450万円が還付される計算になる。


 以下に所得税の税率表を掲載するので、自身のエンジェル投資で控除されるのはどの税区分に当たる課税所得なのかを確認してみよう。

 

※所得税率速算表

 

 優遇税制B

 対象企業への投資額全額をその年のほかの株式譲渡益から控除する
 ※上限なし
 ※設立10年未満の企業への投資が対象

 

 株式の譲渡益がある投資家の場合には、上限金額のない「優遇税制B」の適用も考えたいところだ。優遇税制AとBでは、「A」のほうが厳しい要件となっており、優遇税制Aの要件を満たす企業への投資であれば優遇税制Bを選択することも可能となっている。

 

株式売却時に受けられる優遇税制

 

 対象企業の株式を売却したときに損失が生じた場合には、その年の他の株式譲渡益と損益通算(相殺)ができる。その年に相殺しきれなかった損失は、翌年以降3年にわたって順次株式譲渡益と通算できる。

 

 通常では、上場株式と非上場株式の損益通算は認められず、また非上場株式の損失は翌年に繰越ができない。しかし、この特例を利用すると、いずれも認められるというものである。
 

 この特例は、所得税、住民税の両方について適用可能だ。

 

エンジェル税制の要件を理解する

 

 上述したように、エンジェル税制は、他の優遇税制には見られない魅力的な制度だ。
それではいよいよその要件についてまとめてみるが、今回は個人投資家から直接投資する場合を想定している。投資事業組合などを通じて投資する場合もあるが、その場合についての解説は別の機会に譲ることにしよう。

 

 エンジェル税制を適用するためには、「基準日」において①投資を受ける側の企業の要件と②投資をした個人の要件を同時に充たす必要がある。

 

基準日について

 

 「基準日」とは、これから説明するエンジェル税制の要件をいつの時点で充たしていなければならないのか、その基準となる日である。

 

 条文上はいろいろなケースを想定し、また会社法上の規定を考慮して詳細に定められているが、通常は、株式払込の最終期限となる日を定めて新株発行の手続きを行うこととなろう。この場合、「最終期限となる日(払込期日)」が基準日となる。

 

投資を受ける側の企業の要件

 

 投資を受ける側の企業の要件は以下の5つである。

 

 1、 中小企業であること
 2、 未上場・未登録の株式会社で、風俗営業等に該当しないこと
 3、 特定の株主グループからの投資の合計が5/6を超えないこと
 4、 大規模法人グループの所有に属さないこと
 5、 企業の経過年数に応じた要件を充たすこと

 

 この中で、1及び2については通常さほど問題にならない。注意すべき点とすれば、企業側は個人事業主や合同会社、あるいは外国法に基づく会社ではなく、日本の「株式会社」でなければならないこと、「中小企業」の要件が、業種ごとに定められていること、である。


 また、株式の種類には特に要件はなく、種類株式による投資でも可である。また新株予約権の発行についても、新株予約権を行使して金銭を払込み、株式を取得した際にはエンジェル税制の対象となる。

 

 

投資をした個人の要件

 

 企業要件を充たしていることが確認できたら、次は、投資家個人ごとに要件を確認していく。要件は以下のとおりである。

 

1、 金銭の払込により、対象企業の株式を取得していること
2、 対象企業が同族会社である場合、所有割合の大きい者から第3位までの株主(およびその親族や関係会社等)の所有割合を順位加算し、その割合が初めて50%超になるときにおける株主に属していないこと

 

 投資家個人については、通常は同じ条件で出資することが多いと思われるが、中には特殊な条件で株式を取得する場合があるかもしれない。そのような場合を除外するために1の要件がある。

 

 企業要件、個人要件の詳細については、次回の連載で検討することにしよう。


(本件に関するお問い合わせ)
株式会社イーアライアンス
MAIL:info@e-alliance.co.jp
TEL:03-6256-8477

 

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