ブロックチェーン・インパクト vol.4

Jul 18 2018

「ビットコイン」の問題点

 

 ビットコインの時価総額12兆円という数字は、株式でいうと日本郵政グループ三社の時価総額合計と同等であり、国家予算と比較するとスウェーデンやギリシャを凌ぐ勢いになっている。

 

 もし仮想通貨が世界の共通通貨のような使われ方をするならば、その一つはビットコインであることは間違いない。

 

 しかし、一部の仮想通貨に詳しいギークたちはそのようには思っていないようだ。連載第4回目は、ビットコインの気がかりな点についてまとめてみた。

 

 

ジャパン・ブロックチェーン・カンファレンスでの一幕

 

 2018年6月25日、26日に開催されたジャパン・ブロックチェーン・カンファレンスでは、多くの登壇者が仮想通貨の未来についてプレゼンテーションしていた。

 

 その中で、今後、どの仮想通貨を購入してみたいか、という簡単なアンケートがあったので紹介してみよう。

 

 Q:今後はどの仮想通貨を購入してみたいですか?

 ビットコイン:約15%
 イーサリアム:約70%
 ビットコインキャッシュ:約65%

 

 これはプレゼン中にライブでスマホを介して行われた投票結果なので正確なものではなく、投票が積みあがるごとに数値は変わっていった。しかし、割合的には上記のようなイメージである。

 

 これを見て「ビットコインはやばい!」と思った方もいるだろう。しかし、このプレゼンの前に、ビットコインに批判的な立場をとっており、ビットコインキャッシュを広めていこうと精力的に活動するロジャー・バー氏(bitcoin.com CEO、ビットコインの神・先導者と称されている。)のプレゼンがあったことを加味する必要がある。

 

 とはいうものの、ビットコインのブロックチェーン生成の技術にはいくつかの懸念点も存在する。

 

ビットコインの難点

 

マイニングコストの問題

 

 前回まとめたビットコインのブロックチェーンの生成過程の中でも、特にマイニングの作業は膨大な電力を浪費する。

 

 中国では、大きな工場施設のような規模でマイニング施設が建設され、全世界を相手にした、し烈なマイニング競争が繰り広げられている。近時のビットコインの下落により、マイニングコストのほうがマイニング報酬を上回り、稼働停止や設備の移転を余儀なくされているマイニング工場もあると聞く。

 

 また、電力は地球の資源で賄われているために、資源が無駄遣いされている、という指摘もある。通常国家の中央銀行が行う通貨の管理を、分散型のブロックチェーン技術が担っているのだから、それなりのコストは仕方がないといった考え方もあるが、議論が分かれるところだ。

 

 

スケーラビリティ(容量)の問題

 

 仮想通貨の取引所を見てみると、ビットコインとよく似た名前の仮想通貨が取引されていることに気づくだろう。冒頭に紹介した「ビットコインキャッシュ」である。

 

 ビットコインは世界中で取引が行われているため、未承認の取引が次々と積みあがっていく。取引量が飛躍的に加速するにつれて、処理しきれない取引が生じ、未承認のまま放置されたことが一時期問題になったりした。

 

 これは、ビットコインの一ブロックの容量が1メガバイトに制限され、1メガバイトより大きいブロックはネットワークから排除されるルールになっているからであった。このため、取引の速度を上げるために、1ブロック1メガ、というルールを変えて、2メガ以上にしてはどうかという議論が巻き起こったのである。

 

 しかしこれには大きな問題がある。システム上、1ブロック2メガバイトのブロックは排除されるルールであるために、たまたま2メガバイトのブロックに束ねられた取引は承認されないことになる。混乱が生じるのは必至である。

 

 これをめぐっては実際に容量の大きいブロックにすることについての賛成派と反対派が対立した。結局、現在は、「セグウィット」と呼ばれるデータの格納方法を変える方法により、1メガバイトのブロックでも多くの取引を取り込めるようにして処理速度を向上させる方式がとられることで、1ブロック当たり1メガバイトのルールは維持された。

 

 一方、容量の大きいブロックにすることについての賛成派は、セグウィットに反対し、1ブロックを8メガバイトとする「ビットコインキャッシュ」を開発し、ビットコイン所有者に同額のビットコインキャッシュを付与した。

 

 このように一定のルール(「プロトコル」と呼ぶ)に従う、という方式は規模が大きくなり問題が生じてくるとその参加者同士の合意形成に問題が生じる。

 ビットコインは運営者、管理者がいないため、マイニングを行っている場所の電気料金、通信回線速度、ほかの仮想通貨とのシェア争い、など国籍をまたいだ論争に発展するケースが多い。このようなルールの変更どのように実施していくのか、今後の課題として残されている。

 

(有力な管理者も世界中に存在する)

 

即時決済の問題

 

 ビットコインは10分間に一つのブロックが形成されるようにマイニングの難易度が調整されている(前回のコラム参照)。したがって支払が完了するまで基本的に10分間のタイムラグが生じる。

 

 現在では仮想通貨取引所やペイメントサービスによって、多くの部分は解決されているが、ビットコインの仕組み自体を補完するサービスを利用せざるを得ないというところは新たなコストを生み出す原因にもなる。

 

ビットコインのほかにも有望なものがある

 

 2回にわたってビットコインの中身について掲載したが、エッセンスのみを抽出しているため、省いている事柄も多々ある。興味のある方はブロックチェーンに関する解説本を読んでみるといいだろう。

 

 もっとも、市販されている仮想通貨に関する書籍は中身の薄いものも多く、また理論的に薄弱であるにもかかわらず「必勝投資」をうたうものもあるので注意が必要だ。ブロックチェーン全般について説明されているものを、書店で一読してから購入することをお勧めする。
 

 次回は、ビットコインのほかに有力視されている「イーサリアム」と「リップル」について、その有用性はどこにあるのかについて探ってみる。

 

 

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