海外不動産投資 フランス・パリ vol.1
現地専門家が伝える!世界中から熱視線を浴びるフランス・パリ不動産投資とは?
2018年4月11日13時30分、東京都渋谷区恵比寿の一角に多くの投資家や専門家が参集し、これから始まる新しいグローバル投資の幕開けを予感しながら、セミナーの開始を静かに待っていた。
数年前から海外不動産投資がにわかに活発化し、伝統的に人気であったハワイ、シンガポールのみならず、マレーシア、フィリピン、ベトナム、アメリカ・テキサス州、などバラエティーに富んだ場所において、日本の投資家はこぞって不動産投資を行った。しかし、その多くが短期投資であり、イグジットをし損ねた投資家は、空室と老朽化に悩むケースも多いと聞く。
フランス共和国・パリ。その重厚な歴史と文化的な薫り、ファッション、ライフスタイルは世界中の人々を魅了してやまない。投資先としても、東京、ロンドン、ニューヨークなどと並び常にトップ10の都市に名を連ねる(世界的な不動産サービス企業であるジョーンズラングラサールのアニュアルレポートなど)。
しかしながら、言語の壁があってか、距離的に離れているからか、フランス・パリの不動産投資が日本の投資家に紹介されることはあまりなかった。
2024年夏季オリンピック開催都市として決定したフランス・パリは、世界中の投資家から今までにない熱視線を浴びている。東京が2020年夏季オリンピック開催地として決定した後から東京の不動産価格が高騰し、現在も高止まりのままという感覚は、日本の投資家の共通認識であるといえよう。
「今、フランス・パリでも同様のことが起ころうとしている。」海外の投資家はそう感じているようだ。
フランス・パリは、いままでもこれからもずっと世界一の都市のひとつであり続けるであろう。投資ポートフォリオをワンランク上のステージに引き上げるパリ不動産投資の魅力について、現地専門家・嫁兼 暁(よめがね さとる)氏を招聘して開催されたセミナーの模様を、これから4回にわたって掲載する。
講師紹介
嫁兼 暁(よめがね さとる)
Long Stay Service France社 社長
SAP Services社 社長
Rising Partners France 社 取締役
中央大学商学部卒。学生時代にパリの建築、芸術文化に触れ、大学卒業後に渡仏。2003年プロパティマネジメント会社の立ち上げに参加することがきっかけになり、不動産業に従事することになる。
以降、短期宿泊施設セジュールアパリの不動産30件を運営する傍ら、約100件の賃貸物件の管理、運用を行い、リーマンショック以降は不動産売買を本格的に開始。2016年以降ジェトロ・パリの不動産アドバイザーとして主に日本から出店する商業物件取引のコンサルティングを務める。在仏18年。
パリ市内の概観
本日講師を務めさせていただきますライジングパートナーズフランスの嫁兼と申します。本日はよろしくお願いいたします。まず簡単に自己紹介をさせていただきます。私は、2000年からパリに住んでおり、在仏18年になります。パリでは不動産コンサル会社を営んでおりまして、この業界は15年になりますが、プロパティマネジメント業から始めて現在は住宅商業物件、オフィス物件の賃貸売買、と幅広い業務を行っております。
国際都市・観光都市
まず、皆様にパリについての理解を深めていただきたいということがあります。パリにいらした方も多いと思いますが、まずこちらのパリの地図からご覧いただきたいと思います。
パリ市は20区の行政区で形成されており、右岸が商業地区、左岸が学術エリアとして知られております。右岸、左岸というのは、セーヌ川を隔てて、北側を右岸、南側を左岸と呼んでいます。広さは山手線の内側の1.4倍の広さ、この中に225万人が暮らしている街です。
パリというと世界的に観光都市として知られておりますが、年間に3200万人の観光客が訪れる街となっており、ホテルも非常に多い街です。ルーブル美術館、オルセー美術館、エッフェル塔、凱旋門、サクレクール寺院、ノートルダム寺院、オペラ座、などの名だたる観光名所が並ぶほか、UNESCO本部、OECD本部など国際機関も多数あり、外国人が多く住んでいる街でもあります。
街並みの美しさ
パリというと芸術の都、花の都、いろいろな呼ばれ方をしますが、そのゆえんは街並みの景観の美しさにあります。パリは厳格な条例を制定して、19世紀から20世紀初頭の街並みが残っております。またパリは観光都市ということもあり、交通網が非常に発達し、302か所の地下鉄の駅が存在しております。ですので、どこに住んでも最寄駅から徒歩5分、というような立地になります。
パリ市内の建造物の特徴
パリ市内の住宅不動産の半数以上は1930年以前に建設された石造りの建物となっております。日本では石造りの建物はあまりないかもしれませんが、地震のない街であるという特徴から、石造りの建物が長い間維持・管理され、残存しています。
日本国税庁によると 、パリのこのような石造りの建物は、耐用年数表の「石造り・れんが・ブロック造り」の建造物に該当し、法定耐用年数は38年となっております。よって、それらパリの建造物は法定耐用年数のすべてを消化していることになります。
法定耐用年数を経過した建物は、中古資産の耐用年数の計算方法である「簡便法」を用いて、法定耐用年数の20%の年数で償却を行うという例もあります。パリ市の住宅は、100年を経過した建物であっても内装が手入れされリフォームされている場合が多いです。
またその価値は上がり続けているため、建物の価値は7割以上と解釈しています。我々も不動産価値のレポート作成するときは建物を7割程度とすることが多くなっています。日本においては明示された評価方法がないので、現地の不動産業者や不動産鑑定士があらゆる資料を基に評価し、レポート作成しています。
住宅市場の特徴
フランスの住宅市場の特徴として、築年数が住宅の評価に影響することが日本よりも少ないというものがあります。パリ市内で新築の建物がほとんど建たないことから、パリに於いては99%が中古物件の取引です 。
中古物件だから価値が下がる、というわけではなく、新築の安い建材を用いたものよりも、石造りの構造のしっかりしたものに重きがおかれる傾向があります。また中古物件にはフランスの付加価値税が付されないということも中古物件が人気である理由の一つです。
現在、フランスの付加価値税は20%ですので、新築の物件は20%上乗せされた金額で取引しなければならないということになります。一方で、築100年を超えた建物でも、築2,3年の建物と価格の差があまりありません。オスマニアン建築と呼ばれるアール・ヌーヴォー、アール・デコの影響を受けた非常に美しい建物ですが、天井高が2.8mから3.5mあります。
現在の新築は2.6mから2.8mが主流となっておりますので、中古物件のほうがボリューム感のある空間づくりができているということが言えます。また、リフォーム技術が非常に発達しており、モダンなつくりになっているところが多くなっております。
パリ市内は景観の維持に努めているため、老朽化したものを取り壊して新しいものを建設することができません。一部、13区、15区、19区の一部で高層ビルが建っているところもありますが、基本的に建替えの開発ができないために、建物の延べ床面積が増えない街であるということが言えます。
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