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ブロックチェーン・インパクト vol.10

ブロックチェーンの未来

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 ブロックチェーン技術はまだまだ発展し続け、さまざまな産業に応用される。これから近い将来において、予想もつかないようなビジネスモデルでの新たな市場価値の創造を、目の当たりにするだろう。


 今回は連載最終回として、ブロックチェーンが生み出す新たな価値について深堀するとともに、ブロックチェーン技術によって実現される未来はどのようなモノかについて、身近な視点から予測してみたいと思う。

 

 

ブロックチェーンが生み出す価値

 

どのようにして価値が生み出されるのか?

 

 ブロックチェーン技術による「トークン化」の概念は、この連載においても繰り返し登場してきた。ブロックチェーンの「改ざんが困難」「二重払いの防止」「管理者不在の分散型システム」という大きな特徴は、今まで価値が認められにくかったものに「トークン」の形で価値があるものとして記録されることが可能となった。

 

 これは、1つの機関(企業)が価値のあるものと認証したから価値があるものと認められる、という今までの方式から、多くの人から「価値がある」と認めたから「価値がある」のだ、という方式が可能になったことを意味する。

 

 それでは、「トークン化」によってどのように価値が生み出されていくのか、もう少し掘り下げて考えてみよう。

 

マイクロペイメントによる価値の創造

 

 ブロックチェーン以前では、少額の資金の送金は送金手数料がかかりすぎていたために、いわゆるマイクロペイメントは発達しなかった。

 

 ビットコインをはじめとする仮想通貨が最も得意とすることは、少額の送金や決済を、少額の手数料で可能にすることである。これにより、例えば、フェイスブックの「いいね!」に相当する感動や小さな感謝などに「投げ銭」のような形で思いを伝えることが可能となった。

 

 小さなコミュニティ間ではそれほどインパクトはないが、インターネットで全世界がつながった今ではこのようなマイクロペイメントが全世界から集まり、大きな価値になることも容易に予想がつくだろう。

 

 これを実現させようとしているのが、「Wowoo(ワォー)」というサービスである。日本からもオウケイウェイブ(OKWave/Q&AWebサイトの先駆け)が資本協力するなど大きな話題となっている。Q&Aサイトのベストアンサーに感謝のトークンを送る、といった使い方を想定しているようで、いわば「感謝」のトークン化といえよう。

 

投票による価値の創造


 今までにもコメントや投票のような機能があるものはあった。フェイスブックの「いいね!」やYou tubeのチャンネル登録のようなものである。

 

 これをさらに進めて、トークンを「投票権」および「将来に投票の対象が売れたら利益の一部を分けてもらえる権利」をあらわすもの、と定義し、スマートコントラクトとの組み合わせにより、この利益の分配を自動的に行うようにするというサービスがちらほら現れた。

 

 これは、既存の法定通貨だと銀行を介しての取引になるためにこのような仕組みはできないが、トークンを介しての取引だとすべてが自動化されるため、画期的なサービスであるといえる。前回のコラムで紹介した「Artlery」ほか、音楽に投票するもの、またビジネスモデルに投票するものなど、いろいろなものに価値を生み出している。

 

権利証明による価値の創造


 所有権の証明、というと不動産登記が思い浮かぶが、ブロックチェーン技術が発展した現在においては、権利の証明を公的機関が行わなければならないという必然性はなくなった。

 

 動産は、民法上所有権の対抗要件が法定されており(いわゆる「占有」の概念)、曖昧過ぎて時代に合わなくなってきている。一部、動産譲渡担保の登記が認められているが、手続きが煩雑だ。ブロックチェーン技術の発達によって、動産のトレーサビリティが記録できるようになったことから、アートや貴金属(ダイヤモンドや宝石)などの出どころが明らかになり、価値がより信用のおけるものとなった。


 またデジタルコンテンツにおいては、「所有」の概念すらなく、今までは違法コピーの問題からこの分野のアートは発展性に乏しかった。この分野にブロックチェーンを持ち込めば、デジタルコピーできない技術が発達し、また権利の移転をブロックチェーン上で管理することにより、数量が限定されたリトグラフのようにデジタルコンテンツが販売できるようにもなった。

 

 このように今までに価値が明確でなかったものに新たな流通の手段を見出すことができたのは大きい。

 

 

ブロックチェーン技術の未来

 

自立分散型組織は可能か?


 最後に、ブロックチェーン技術の未来について少し考えたい。インターネットが世の中に広まるにつれて、人々の消費行動やコミュニティのあり方、ビジネスの方法などあらゆる面で大きな変革があった。ブロックチェーン技術はこれまでに見てきた通り、権威、信用といったものの考え方を変える力を持っている。

 

 一つ興味深いインタビューがある。Business Insider Japan(ビジネスニュースを扱っているWebサイト)に掲載されたイーサリアム財団に参画している宮口礼子さんへのインタビューである。この中では組織の在り方として、プロジェクトの達成を中心に考えることが述べられている。

 

 つまり、あるプロジェクトが達成させるために、組織が大きくなっていく必要はなく、外からの知見も頼りながら、プロジェクトのPDCAの仕組みが自動的に回っていける状態をつくることが重要である、と。そこには経営者すら必要なく、プロジェクトが達成されれば、組織は解散する。

 

 イーサリアムのスマートコントラクトによるルール設定によりサービスの提供や組織の運営が自動化されるというわけだ。

 

どのようなモノにブロックチェーン技術を適用するか?

 

 これまで見てきた通り、ブロックチェーン技術はどのようなモノに応用するかでプロジェクトの内容は大きく変わってくる。まとめとして、ブロックチェーン活用の切り口をいくつか紹介する。

 

価値がなかったものに新たな価値を

 

 今回紹介したような、マイクロペイメントや投票の方法で、価値のなかったもの、あるいは価値があってもそれを他人に譲渡したりすることが難しかったものは「トークン化」によって価値を見出すことができる。もっとも、短期間に多くのユーザーを集めなければならないため、マーケティングが重要となってくるだろう。

 

「会社」組織では難しかったサービスの提供

 

 組織の運営を自動化する、という発想は新しいコミュニティビジネスを生み出す可能性がある。例えば、全世界に散らばった旅行アドバイザーから旅行プランの提案を受けるサービス、など、今まで組織として行うことが困難だったビジネスが、ブロックチェーンコミュニティとして誕生し、そこでは、独自の通貨で利益が分配される。

 

 また、あるプロジェクト限りのコミュニティが生まれ、プロジェクト達成とともに自動的に利益が分配されコミュニティは終了する、というような組織形態もブロックチェーンのスマートコントラクトでは可能となろう。

 

 

サービス提供と決済の同時化


 サービスを提供して、円やドルで支払う、というのは今までの発想で、今まではこの2つの行為は完全に分離していた。ブロックチェーン技術では、この2つは一体化し、サービスの提供を終了すると自動的に決済まで終了する。

 

個人間での価値の移転

 

 中央管理者を介さずにCtoCでいろいろな価値が移転できる、ということはブロックチェーン技術の大きな強みである。「メルカリ」はCtoCビジネスの潜在能力をいかんなく引き出して成功したが、「モノ」ではなく情報、芸術、感情、時間・・・個人の持っているいろいろな価値がシェアされ、自動的に決済まで完了する、という時代がやってくる。

 

ブロックチェーンは新しい時代の幕開けとなるか?

 

 ブロックチェーン=ビットコイン、と思っていた方は、この連載で大きく考え方が変わったことだろう。ブロックチェーン産業はまだ始まったばかりであり、無限の応用可能性を秘めている。これを機会に自らのビジネスに生かしてみることを考えてみてはいかがだろうか。

 

(お問い合わせ)
株式会社イーアライアンス
MAIL:info@e-alliance.co.jp
TEL:03-6256-8477

 

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